今回はシュネムという町に住んでいた、とある女性を取り上げます(王下4章)。シュネムは、北イスラエル王国ゼブルン部族に属し(ヨシ19章13節)、ガリラヤ湖の南西20㎞ほどに位置しています。
女性は裕福でした。そして結婚しており子どもはいません。預言者エリシャがシュネムの町を訪れた時、彼女は度々食事をふるまっていたようです。さらに彼女は、エリシャを「神の人(=預言者の古称)」と見破り、自宅を改装してエリシャが自由に使える部屋を提供しました。彼女は何の見返りも求めず無償の親切をエリシャにしています。
エリシャは恩返しのつもりで、彼女に男子の出産を約束します。そしてその預言は一年後に実現しました。イスラエルの始祖サラの出産記事と響き合う物語です。子どもはすくすくと大きくなりました。
ところが、その子どもは急病によって死んでしまったのです。彼女はシュネムから北西に20㎞ほどにあるカルメル山のエリシャのもとに駆け込み、猛抗議をします。「わたしがあなたに息子を求めたことがあったか。子の授かりというぬか喜びをさせた上で、その子の病死をも味合わせ、わたしを欺くとは何事か。子は死んだが、主は生きており、あなたも生きている。何らかの責任を果たせ。」
エリシャはカルメル山からシュネムに直行します。そして彼は自分のために用意されている、あの部屋に行き、寝台におかれた子どもの遺体と対面し、病死した子どもを復活させるのです。この場面は、預言者エリヤや、ナザレのイエス、使徒ペトロ、使徒パウロが行った奇跡を彷彿とさせます(王上17章、マコ5章、ルカ7章、ヨハ11章、使徒9・21章)。またティルスの女性とも重なります(マコ7章)。
「女性たちは復活により彼女たちの死者たちを受け取った」(ヘブライ11章35節、私訳)。新約聖書もシュネムの女性の信仰を記念しています。JK