今回はアモスという男性預言者です。紀元前8世紀の人物であり、現存する最古の預言書の著者。言い換えれば「預言という文学分野の創始者」です。アモス書は旧約聖書最古の文書なのです。文学分野の創始者という点でアモスはマルコに並び立っていますし、最古の文書という点で旧約の「アモス書」は新約の「テサロニケの信徒への手紙一」に比肩します。
アモスは「テコアの牧者」(アモス書1:1)です。「テコア」は南ユダ王国(7:12)ベツレヘムの10kmほど南に位置する町です。「牧者(ノーケード)」は単なる「羊飼い」(ローエー)ではなく、大規模な酪農経営者であり、国際的な豪商を意味するものと考えられます。彼は当時の定義における「預言者」(7:14)ではありません。北王国のエリシャとその弟子たちのような国家のシンクタンク(政策立案集団)としての預言者たちの一人ではないのです。
彼は日常の仕事であるいちじく桑の栽培と酪農をしている最中に、神の召命を受けました。北隣の姉妹国・北イスラエル王国に行って、その地で預言をし、権力者たちのあり方を批判せよというのです(7:15)。
識字率の低い古代社会にあって、彼はフェニキア文字を知っていました。国際的な商談があったからです。北王国の中心としにも行き来していたことでしょう。彼は、格言や詩文に親しむ知識人でもあります。富もあり自由も楽しんでいました。それだからこそ社会に対する批判精神を養うことができました。アモスは経済的繁栄を誇る北王国において、貧富の差が激しいことを実際に見て、隣国人でありながら痛烈に批判します。自分が持っている知を総動員して、詩文学と格言を用いた「預言」を書き綴ります。神から選ばれた民イスラエルは、選ばれた者にふさわしく行動しなければ、正に選ばれたがゆえに滅ぶ(3:2)。
北王国滅亡後アモスは真実の預言者とみなされるようになります。JK