今回はイシュマエルという男性。アブラハムの長男です。
イシュマエルの母親はハガルというエジプト人です。彼女は元々アブラハムの妻サラに仕える奴隷でした。一夫多妻制のもと、ハガルは「第二夫人」として迎えられ、息子のイシュマエル(神は聞くの意)が生まれます。
父アブラハムの不信仰のゆえですが(創世記17章17-18節)、イシュマエルは神からの祝福を得ます。「そしてイシュマエルのためにわたしは貴男のことを聞いた(動詞シャマ)。何と、わたしは彼を祝した。そしてわたしは彼を実らせるのだ。そしてわたしは彼を非常なる力において増やすのだ。彼は十二の指導者たちをもうける。そしてわたしは彼に大いなる国を与えるのだ」(同20節私訳)。この祝福の内容は、アブラハムとサラの孫ヤコブ(別名イスラエル)が十二部族の始祖となったことと類似しています(創世記25章13-15節、出エジプト記1章1-5節)。
イシュマエルが13歳の時に、異母弟イサクが生まれます。イシュマエルは弟イサクを面倒をみて子守もし、遊ばせていたことでしょう。そのような中、「そしてサラは見た、エジプト人ハガルの息子――彼女がアブラハムのために生んだ――が遊んでいるのを」という出来事が起こります(21章9節私訳)。「遊んでいる」と「笑う」は同じ動詞ツァハクです。この動詞はイサク(原音イツハク)の名前の由来でもありますから(同6節)、物語を繋ぐ役割を持っています。対象語がないためイシュマエルが誰と遊んでいるのかは不明。実はサラによる母子追放の主張は弱いものです(同10節)。しかし父アブラハムはイシュマエルを棄てます。
父の家から棄てられたイシュマエルは泣きます。神はその泣き声を聞く方です(同17節)。彼はインマヌエルの救いを経験し、パランの荒野で自立し、エジプト人と結婚し、上述の子宝に恵まれ、娘マハラトをエサウと結婚させ、137歳で天寿を全うします。恩讐を超え彼は父を弟と共に葬っています。JK