2025/07/23今週の一言

今回はエズラという男性。ユダヤ教において「第二のモーセ」「最後の預言者」として尊敬される一方、キリスト教においては影が薄い人物です。

バビロン捕囚からのユダヤ人の帰還が前539年から始まりました。前515年にはエルサレムに第二神殿が建築されます。この歴史の大きな流れに乗って、「モーセの律法に詳しい書記官」(エズ7:6)エズラが、レビ部族を率いてエルサレムに帰還します(前458年)。エズラたちは金銀と共に神殿の祭具を奉納します。

「書記官」(ソフェル)はペルシャ帝国の行政官の職位名です。彼は自身の職業を用いて故郷を支援します。この点で、ペルシャ帝国の献酌官まで上り詰めたネヘミヤが、エルサレムの城壁修復に尽力した姿と重なります(前444年)。さらには、エジプトの宰相となったヨセフや、バビロン/ペルシャで出世したダニエル、ペルシャの王妃となったエステルにも似ています。

「書記」(ソフェル)には写本を書き写す写字生という意味もあります。おそらくエズラはモーセ五書(創・出・レビ・民・申)の最終編纂責任者です。ネヘミヤ記8章には、エズラがネヘミヤの城壁修復後のエルサレムで律法(モーセ五書)を朗読する姿が報告されています。エズラは捕囚地で確立した「神の言葉による礼拝」を、第二神殿で行っています。物心ついた男女全員が参加し、アラム語同時通訳サービスまでついた、見事なまでに多元性を包摂した礼拝です。

正典が礼拝の中心に置かれて会衆を導き、礼拝において会衆が正典を権威付け、会衆が正典を拡大し(五書に加えて旧約の他の諸文書、さらには新約聖書へ)、新規部分が礼拝に持ち込まれ…。この循環を創始したことがエズラの貢献です。

その一方でエズラは民族主義的な政策を布きます。非ユダヤ人女性と結婚したユダヤ人男性を調査し、強制的に離婚させるというのです(エズ10章。ネヘ10章も参照)。エズラの選民思想を、後のユダヤ教正統は継承し、教会は批判しました。JK