今回はヨナ(鳩の意)という男性預言者、前8世紀の北イスラエル王国の人です。列王記下14章25節によると、彼は北王国の王ヤロブアム二世の側近のようです。ヨナの政策提言が見事に当たり、ヤロブアム二世治下、北王国は空前の経済繁栄を享受しました。ヨナは国父と崇められたことでしょう。
ヨナ書によると神は高みに立つヨナに向かって、北王国最大の軍事的脅威である、北東の大国アッシリア帝国の首都ニネベに行けと命じます。ニネベの住民に滅びの警告をするためです。愛国者・「イスラエル人ファースト」のヨナは神の召しを拒否します。逃げた理由は、彼が臆病であったからではありません。自らの民族主義・国家主義を根拠に、神の預言者が神に従わなかったのです。
ヨナは北王国の持続的繁栄のため、また、今までなされたアッシリア(あるいはその属国)による北王国への侵略に対する恨みや非イスラエル人への差別から、アッシリアの弱体化と滅亡を願っていました。もしもヨナの警告をアッシリア住民が真摯に受け止め、自らの悪を悔い改めた場合、神はニネベの町を滅ぼさない可能性があります。愛国者ヨナには耐えられない事態です。
ヨナは国家に殉じる覚悟で自らの生命を断とうと海へ飛び込みます。自分が死ねばアッシリアも悔い改める機会を失って滅びるはずという、「自爆テロ」の心境です(1章)。しかし神はヨナの命を惜しみます。大魚の腹の中で神はヨナに悔い改める機会を与えました(2章)。
悔い改めたヨナは、熱心に敵国の首都ニネベの住民に神の意思を預言します。「四十日後にニネベは滅びる」と語るヨナの言葉に、王を始め家畜に至るまで悔い改めました(3章)。全世界の創造主である神は悔い改め、ニネベを惜しみます。ヨナの愛国心が再び燃え上がります。死んだ方がましだと喚くヨナに、愛の神は諄々と「あなたの怒りは正しいか」と問い続けます(4章)。ヨナとは、誰。JK