2026/02/11今週の一言

今回はアセナトというエジプト人の女性です。古代エジプトの言葉で「(戦・知恵・創造の)神ネイトに属する者」という意味の名前と推測されています。

アセナトの父ポティ・フェラは、太陽神ラーを祀る町オンの祭司でした(創世記41章50節)。祭司階級は国家統治の中枢を担うエリートでした。特に太陽神系列の祭司、なかんずく太陽神ラーの聖地であるオンの祭司一族は、王族に次ぐ貴族です。ポティ・フェラは「事務次官級の国家官僚」なのです。祭司の職務は、時の王ファラオが権力をふるって統治することの正統性を立証する神学を形成すること、そして天文学・暦・夢の解釈です。

紀元前後に書かれたユダヤ教文学によれば、アセナトはエジプトの多神教信仰からユダヤ教へと回心した後にヨセフと結婚したとされています。しかし実際は聖書に記されているように、一種の政略結婚によってファラオの命令によって二人は結婚したのでしょう(創世記41章45節)。アセナトの意思と関わりなく、ファラオが、夢解きをするヘブライ人ヨセフを貴族の一員にさせて宰相に引き上げるために結婚させられたのです。彼女は不本意だったかもしれません。

アセナトは二人の息子を生みます。長男マナセ、次男エフライム、二人ともヘブライ人の名前ですから、彼女は命名に関与していないのでしょう。エジプト人貴族アセナトは、ヘブライ人の元囚人・夫ヨセフを最大限尊重しているように思えます。エジプト人が羊飼いという職業を蔑視していたことを考えると、彼女の公平な態度は尊敬に値します。彼女は二人の息子を舅ヤコブの養子とすることに反対していません。ヘブライ人に割り当てられたゴシェンの地で二人はヘブライ人として育ち、そこで子孫を増やし、最終的にイスラエル十二部族の名祖となりました。選民イスラエルは最初からエジプト人をも、またカナン人(ユダの妻タマル)をもルーツに持つ「種々雑多な民」です。JK