NHKに対する抗議声明(東京地方連合社会委員会)

2014年2月28日

日本放送協会

会長 籾井勝人様

東京地方バプテスト教会連合

社会委員会委員長 城倉啓

〒154-0002

東京都世田谷区下馬1-20-4

籾井勝人会長、百田尚樹経営委員、長谷川三千子経営委員の発言に抗議します

 

籾井会長は、1月25日の就任記者会見の際に以下のような発言をされました。

1.日本放送協会(以下「NHK」と言う)が行う国際放送に関して「領土問題については日本の立場を主張するのは当然。政府が右ということを左と言うわけにはいかない。」

2.「従軍慰安婦」問題について、「この問題はどこの国にもあったこと。韓国は日本だけが強制連行したように言うからややこしい。補償しろと言うが日韓条約ですべて解決していることをむしかえすのはおかしい」

3. 安倍首相らの靖国参拝に関して「総理の信念で行かれた。それをいい悪いという立場にない。昔の人は戦争に行く時に『死んで靖国に帰る』と送り出した。」

4.特定秘密保護法の取り扱いについて、「一応決まったことをああだこうだ言ってもしょうがない。政府が必要だと言うのだから様子を見るしかない。昔のようになるとは考えにくい。」

このような発言は、受信料で成り立つ公共放送であるべきNHKが、政府から独立して健全な民主主義の発展に貢献するという役割について全く理解していないと考えます。

1の発言は、政府に無批判に追従することの公言であり、ジャーナリズムの精神を否定することです。この発言は自らNHK会長職にふさわしくないことを自認することに他なりません。

2の発言は女性の人権に対する深刻な侵害です。他国を引き合いに出して正当化できる問題ではありません。また、韓国との友好関係を構築しようとするべき時に一層溝を深めることになりかねません。国際的にも問題化している議論されている問題を多角的に報道して議論を深めることこそ放送機関の役割です。

3の発言に関連して、小泉首相の靖国参拝について、大阪高裁(大谷正治裁判長)は、2005年「内閣総理大臣の参拝は政教分離原則に触れる。」との違憲判断を示しています。安倍首相の靖国参拝は違憲ですから「悪い」と批判すべきです。また「昔の人は戦争に行く時に『死んで靖国に帰る』と送り出した。」との発言は、戦争を賛美する靖国神社の宣伝・教化につながるもので、このような発言は、「放送法第4条二 政治的に公平であること」に抵触するばかりか、日本国憲法20条3項の「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」に抵触する行為に他ならないと考えます。

4の発言についても、特定秘密保護法については法律の乱用や人権侵害が懸念されているにもかかわらず、山積する課題に目をつむってしまうように見えてなりません。問題点を指摘し政権を批判することこそ報道機関の役割です。私たち視聴者の知る権利を守り、政権におもねることなく中立公平な立場での放送を求めます。

 

経営委員の百田尚樹氏は、東京都知事選挙期間中の2月3日に田母神俊雄候補の応援演説を行った際に「日本はアジア諸国を侵略したというのも、南京大虐殺も嘘である。世界の国が日本を非難しているというのも嘘であり、非難しているのは中国と韓国だけ」などと発言しました。同じく経営委員の長谷川三千子氏は就任前に、自殺した右翼活動家を神にその死をささげたなどと称賛する追悼文を寄稿しその中で天皇制を批判、女性の社会進出が出生率を低下させたとし男女共同参画社会基本法などを批判しています。

百田氏の発言は、アジア諸国との友好関係を築く上で何の根拠も示さずにこれまでの歴史認識を否定し、近隣諸国の尊厳をも否定することであり、経営委員としての資質を問うものです。

長谷川氏も同様に、現憲法に定められた象徴天皇制や両性の平等を批判するなど憲法軽視の立場で、公共放送としてのあり方を大切にするべき経営委員としてふさわしいとは思えません。

私たちはキリスト者として、イエス・キリストが権力者に屈服することなく義を貫かれた姿に倣い、

公平と誠実を求めています。それゆえにNHK関係者による一連の発言に強く抗議し、籾井勝人会長・百田尚樹経営委員・長谷川三千子経営委員の罷免を求めます。また、NHKが公共放送としての信頼回復のために努めて、健全な民主主義の発達に資する目的を果たされることを切に望みます。