4月24日の祈り会では創世記2章4-17節を学びました。
創世記・出エジプト記・レビ記・民数記・申命記の五つの書を「モーセ五書」と呼びならわします。ユダヤ人たちの伝説によれば、モーセという人が神の啓示を受けて書き下した「一冊の本」と言われているからです。
18世紀以来「モーセ著者説」には学問上の疑義が突き付けられてきました。今日では、聖書の他の書と同様に多くの人の手による加筆・修正・編集がなされていることが認められています。少なくとも四つの思想集団が関わっています。
およそ次のような過程でモーセ五書は現在の形になったと推測されます。
(1)前7世紀のヨシヤ王の申命記改革の時代に申命記の骨格が成立。
(2)前6世紀のバビロン捕囚下での付け加え(創世記から民数記まで)。
(3)前5世紀エズラの帰還までの付け加えと最終形態の整え。
預言者エゼキエルは(2)の時代の人です。そして五書編纂に相当の影響を与えた人物であり、上記四つの思想集団をまとめ上げた指導者とみられます。たとえば創世記2章の「天地創造物語」にもエゼキエル書との共鳴があります。
エゼキエルは全編を通じて神から「人の子(ベン・アダム)」と呼び掛けられます。この呼称そのものが、原人間アダムと対応しています(創2:7)。彼は「エデンの園」(創2:10・15)をしばしば引用します(エゼ28:13、31:9)。また、地から水が湧き出る世界を理想として描きます(エゼ47:1以下)。それはいのちを生み出す環境です(創2:6)。エデンの園から流れ出る大河にチグリス・ユーフラテス川が挙げられているのは、バビロン捕囚の体験からの記述でしょう(創2:13-14)。泥をこねて原人間をつくる神の姿には、粘土をこねて建築物をつくるバビロンの人々の労働風景が重なっています(創11章も)。そして、粘土でつくられた人型人形に神の息・霊・風が吹き込まれると「生けるいのち」となるという記述は、明白に枯れた骨の復活と対応しています(エゼ37章)。
創世記2-4章等を書いた人々を学問上「ヤハウィスト」または「J」と呼びます。エゼキエルと連携しつつ、前6世紀の五書編纂の一翼を担ったJ集団の記述部分に関して、これから学んでいきます。(JK)