今週の一言 2014年7月3日

7月3日の祈り会では創世記13章1-18節を学びました。

わたしが子どもの頃、隣国の軍事的脅威といえばソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)のことを指していました。「ソレンという何をするかわからない国が北海道に攻めてくるのだそうだ」と、子どもながらに信じ込まされていました。昨今、「中国/北朝鮮の脅威」が喧伝されていますが、同じ類の詐欺に遭いたくないものです。軍備のための理由付けならば何でも構わないというのが、戦争で金儲けする人たちの発想だからです。安倍政権の背後にあるものは所有欲・支配欲であり、それこそ紛争の原因となるものです。

不正の富を得たアブラムと、彼の甥ロトもまた、お互いの所有している財産のために争いを起こします。J集団の描くアブラムは交渉事の上手な雄弁家です。今回、アブラムは見事な紛争解決をいたします。

アブラムはロトに先に住むべき土地を選ばせます(9節)。家長であるアブラムは自分が先に選んでも良いのです。自分が譲る態度を示すことこそ、紛争解決の第一歩です。領土問題に対して示唆を与える態度です。

そのことは、先住民であるカナン人とペリジ人を追い出さないということも意味しました(7節)。アブラムとロトは結託して、武力行使や武力による威嚇によって、先住民を追い出すこともできました。アブラム・ロトは、自分たちだけで土地を独占しようという欲望に打ち勝っています。また先住民も集団的自衛権を用いずに、アブラム・ロトらと共存します。

ロトに対するアブラムの言葉も含蓄があります。「わたしたちは人間(複数)・兄弟(複数)なのだから」(8節私訳)。「人間(エノシュ)」という単語を多くの翻訳は「お互いに」とします。このエノシュという名詞の動詞の形は「弱い」という意味です。「わたしたちは、弱い人間同士・対等の兄弟であり、罪びととして平等だ。だから近づきすぎて争うのではなく、適切な距離を保とう」と、アブラムはロトに語りかけたのです。同じ目線で非暴力的に話し合うことが、紛争解決の前提となります。

富を集中させようとした「バベルの塔物語」の対極に、「アブラムとロトの別離物語」はあります。富を分かち合い、他者と距離を保って共存する姿勢に、平和づくりの一例があります。(JK)