今週の一言 2013年5月16日

5/16の祈り会ではホセア書5章8-15節を学びました。

 この箇所の背景には戦争があります。シリア・エフライム戦争です(前734年)。アラム王国(シリア)と北イスラエル王国(エフライム)は北の超大国アッシリア帝国に対抗するために軍事同盟を結びました。そして南ユダ王国をも反アッシリア同盟に加わるように圧力をかけました。この申し出への対応を迷う南王国に向けて両国が侵攻した軍事行動、これがシリア・エフライム戦争です。

これに対して南王国はアッシリアに救援を依頼しました。アッシリアはこの機会を利用して、アラム王国を前732年に、北イスラエル王国を前721年に滅ぼします。ホセアは、シリア・エフライム戦争のさなかに北王国の滅亡を預言しました。アモスの預言の実現を見たからです。アモスの描く獅子のような神が(アモ3:8)、自分の民を裁くのです(14節)。ここに「民族の神」「国家の神」を超える思想があります。民や国に利用される神は、神ではありえません。ヤスクニの思想に与せないゆえんです。

合従連衡に頼り軍事同盟に頼ることの誤りをもホセアは指摘しました。同時代人の南ユダ王国の預言者イザヤは、敵味方に分かれながら同じ趣旨の預言をしています(イザヤ書7章)。日米安全保障という二国間軍事同盟・核の傘に頼る危うさを思います。むしろ沖縄を中心にした東北アジア一帯の友好条約・非核の傘こそが必要でしょう。ホセアとイザヤが交戦中の敵国同士に居ながら連帯していたように、国際的に同趣旨の発言を相響かせることが求められています。

ホセアの透徹した目は、南王国の滅亡をも予見します(12-14節、前587年にバビロン捕囚によって実現)。北王国と同じ問題があることを見抜いていたのでしょう。またアッシリアの支配欲は決して満足しないこと、南王国のその場しのぎの政策も長い目で見れば失政に結果することを理解していたのでしょう。

北王国が滅亡した後、大量の戦争難民が南王国に流れ込みます。これは考古学的にも裏付けられる事実です。ホセアの弟子たちもホセア書を持って南王国に逃げました。そこでアモス書を保存していた者たちや、預言者イザヤや預言者ミカの集団と接触があったと推測します。この人たちは北王国で起こった神の裁きが、南王国に起こらないようにと願って文書活動に励みます。過去の歴史を直視し、現在や将来に関して責任を負う覚悟と意思が、聖書をかたちづくります。(JK)