イエスさまは来てくださいます ルカ２章１－２０節 2018年12月23日 カーソン： 皆様、おはようございます。 毎年、新しいカレンダーをもらうと、最初に、どんな日を調べますか。私はいくつかの日付を楽しみにしています。子供の頃、まず５月を繰って、自分の誕生日を探しました。わがままな行動かもしれませんが、誕生日が平日の場合は、学校がありますから、週末まで友達との誕生日パーティーに「待った」がかけられてしまうのです。だから毎年なるべく早く、パーティーがどうなるのかを確認したかったというわけです。大人になってからは、祝日をチェックして、旅行の予定などを考えるようになりました。 しかしキリスト者としての、もう一つの習慣もあります。今日の礼拝にお集まりの皆様の中にも同じことをしている人がおられるかもしれませんが、毎年、カレンダーをもらうと、まず１２月を繰って、クリスマスの日を調べます。「今年は何日が日曜日のクリスマス礼拝になるか、何曜日がクリスマス・イブ礼拝になるか」。兄弟姉妹とクリスマスを祝いたい気持ちが早って、嬉しくて調べてしまうのです。年がら年中、私たちがアドベントを喜んで期待するのは、なぜなのでしょうか。もちろん、近年は１０月早々にデパートの看板やCMなどからもクリスマスの季節が近いということを教えてもらいます。そうであったとしても、キリスト信徒はクリスマスを、格別に不思議な感じをもって、待っているではないでしょうか。 さて、今週、世界中の人々は小さな家から大きい礼拝堂まで集まって、クリスマスとクリスマス・イブの礼拝で、昨年までに加えてもう一度、イエス・キリストが世界に到来したことを祝います。礼拝で福音書を読んだり、賛美歌を歌ったりすれば、イエスさまの誕生の話を教えてもらえます。もちろん、イエスさまの誕生のことが強調されますが、周りの人々、たとえばマリア、ヨセフ、羊飼いのような飼い葉桶の周りにいた人々の役割にも教えられます。様々な背景を持つ、普通の人々の間にイエスさまは来てくださいました。だからイエスさまの到来を通して、私たちの人生は変えられるのです。 ２０００年後、その時代のイエスさまの周りの人のように、私たちは普通の人として、このクリスマスの物語に向き合っています。その時代の人の話を読みながら、恐れや喜びといった感情を想像してみましょう。 実は、ローラさんと新しい目でこの読み慣れた物語を読み直しています。今年の夏にローラさんの妊娠が分かりましたので、今年のクリスマスはマリアとヨセフの経験に注目しながら、イエスさまの誕生の意味についてよく考えています。皆様は、今年のクリスマス、誰の話について、思い巡らしていますか。 ローラ： 私が１６歳の時、自分の通っていた教会は特別なミュージカルを行いました。このミュージカルの題は、英語で”Celebrate Life,” 日本語で「命を祝う」。旧約聖書の預言から復活までイエスさまの人生の物語を歌で伝えるものでした。その中に、ルカによる福音書１章のマリアさんの賛歌に基づいた歌が一つありました。音楽担当牧師に、「ローラさんはイエスさまを生むマリアさんと同じような年なので、マリアさんの歌を歌ってくれる？」と頼まれました。歌のソロの依頼にも、また依頼の理由にも、ちょっとびっくりしました。１６歳の私には、赤ちゃんを生むことが想像できませんでした。しかし、その時、マリアさんの経験について、以前よりも深く考えさせられました。聖書に書いてあることによって、マリアさんが神さまに信頼しているということは良くわかりました。けれども、聖書は、まだ結婚していない若いマリアさんが困っている感じも告げているように思いました。 １８年後の今、私には赤ちゃんを生むということがもちろん想像できるようになりました。いつものようにクリスマスの話を読みながら、今年はマリアの経験についてもう一度改めて考えさせられています。 ルカによる福音書はマリアのことを注目していて、彼女の経験や考え方が垣間見えます。当時の女性は若くして婚約していましたが、驚いたことに、結婚する前に天使のガブリエルがマリアを訪れて、「あなたは聖霊によって赤ちゃんを生む」というニュースを伝えました。しかも、「この子は普通の子ではなくて神さまの子であり、この子を通じて神さまの愛と救いが世界に実現する」のだそうです。初めマリアは、「どうして、そのようなことがあり得ましょうか。私は男の人を知りませんのに」と言いましたけれども、すぐに神さまの意志に従うことにしました。立ち止まって考えてみましょう。神さまに深い信頼を持っているマリアは、「どうして、私に？」という疑問以外に、他の質問を問うたかもしれません。 「妊娠のことをヨセフに教えたら、彼はどんな行動をとるでしょうか。ヨセフは私とまだ結婚したいと思うでしょうか。」 「この神さまの子にとって、私が良いお母さんになれるでしょうか。」 さらに、妊婦としての生活の中で、今の私と同じようなことを考えたり、経験したりしたかもしれません。 たとえば、マリアもどんな食べ物を食べたいと考えたのでしょうか。マリアにも悪阻があったのでしょうか。マリアも、どんなふうに自分の体と赤ちゃんの体を守るべきかを考えたのでしょうか。もしかしたら、マリアも他の妊婦と同じように色々な質問や疑問を思い浮かべたのではないでしょうか。 色々な感情を抱いていたかもしれませんが、マリアは出産の前にエリサベトという親戚の女性を訪れました。その時エリサベトも妊娠していて、彼女の息子は洗礼者のヨハネという預言者になります。会った時、二人はお互いにお互いの妊娠を喜ばしく祝いました。マリアもイエスもエリサベトに祝福されました。彼女たちは、一緒に神さまを讃えました。この時の経験は、他の人の目には重大な出来事と見られないかもしれませんが、両方の妊婦にとっては、決してそうではなかったと思います。 お腹が大きくなってから、私にも同じような経験が与えられました。日本の文化では、ハグや握手といった、人と人の触れ合う習慣があまりありません。ただし、妊婦のお腹は違うように思います。友だちの女性たちが何回もお腹を触ってくれて、赤ちゃんに話しかけてくれました。私には、このような触れ合いと言葉かけこそが、マリアとエリサベトが経験した出来事だったように思えます。さまざまな心配がわき起こる妊婦にとって、このような経験を通して喜びと恵みが感じられるようになるのです。 マリアの経験についてはっきりわかりませんが、今は妊婦として、彼女が複雑な気持ちを持っていたかもしれないということを理解できます。喜びもあるし、悩みもあるかもしれません。複雑な気持ちを抱えながらも、自分の人生の中に神さまの働きがあることを意識して、結局マリアは神さまに信頼しました。 カーソン： 来年、 初めてパパになりますから、この聖書の箇所を読む際に、ヨセフの立場を強調したいと思います。母親のマリアとイエスさまのことは注目されがちですが、ヨセフの話を考えないで、クリスマスを祝うキリスト者が多いのではないでしょうか。マリアの処女降誕との関係があるか否かははっきり分かりませんが、ヨセフの役割が無視されています。でも、今年、私はヨセフに対して特別の親しい関係を感じています。特に、ヨセフは逆境に倒れない、深い信仰の典型になったと思います。 ヨセフの詳しい話はマタイによる福音書1書18節から25節までに書いてあります。この箇所に、この若い大工が紹介されています。その箇所によると、最近、ヨセフはマリアと婚約しました。結婚式前に、二人は全く一緒にいませんでしたが、「婚約者のマリアが聖霊によって妊娠した」ということを、ヨセフは伝えられました。ヨセフの嬉しさは急に驚きや怒りになったかもしれません。彼の頭の中でどのような質問や疑念が出てきたでしょうか。例えば、「マリアの妊娠のことを私の家族に言ったら、どういう反応があるだろうか。これからも、ユダヤ教の会堂で他の男性と同じように尊敬されるだろうか。」実際のところ、ヨセフはユダヤの法律によって、マリアを石打の刑で処刑する権利を持っていました。けれども、正しいヨセフはマリアの評判を守るために、ひそかに縁を切ろうと決心しました。そのことをする前に、主の天使がヨセフのもとに来ました。「ダビデの子ヨセフ、恐れず妻マリアを迎え入れなさい。マリアの胎の子は聖霊によって宿ったのである。マリアは男の子を生む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである。」と、天使は夢の中でヨセフに言いました。ここでヨセフは深い信仰を証明したと思います。ヨセフは天使の御言葉に、明確に従いました。ヨセフは、マリアとの婚約・結婚を続けるのみならず、イエスさまが生まれるまでマリアと関係することがありませんでした。 今日のルカによる福音書の箇所には、ヨセフの経験の続きが書いてあります。マリアの妊娠中に、「徴税のための登録を先祖の地でせよ」とのローマ皇帝の勅令が出ました。ヨセフはダビデの家に属する血筋であったので、ナザレからダビデの生地ベツレヘムまで、妊娠していたマリアを世話しました。地図によると、この旅は１４４キロぐらいの道のりです。学者によると、通常この旅は４日間かかります。しかし、マリアの体調も考え合わせると、その２倍ぐらいかかったかもしれません。歩きにくい坂や未舗装道などの困難以外にも、野生動物や泥棒からの攻撃という危険性も道にはありました。それでも、ヨセフはベツレヘムまでマリアを連れて行きました。さらに、ベツレヘムに到着してからも泊まる所がありません。ヨセフの血縁の地方であるにもかかわらず、どこの宿屋にも泊まれませんでした。そこでヨセフは自分なりに何とかして馬小屋を借りて、飼い葉桶を準備しました。こうしてマリアは赤ちゃんのイエスさまを産みました。フラストレーションや、家畜の強い匂いや、資源不足の中で、ヨセフは忍耐強くがんばって、イエスさまの到来のために準備をしたのでした。 ローラさんとの間に生まれる自分の赤ん坊（女の子）についてならば様々な質問や疑問に対する解決を具体的に思い浮かべることができますが、正直に言うと、ヨセフとマリアの状況については全然想像できせん。アメリカの小さな町に生まれ育ったから、東京のような交通渋滞・満員電車の中での、ローラさんの世話と赤ん坊のための準備は十分大変です。あの１４４キロの危ない旅は私たちには無理でしょう。また、私たちの場合、病院と自宅の往復については自動車の手配を済ませています。赤ちゃんベッドや他の必要な物も、もう考えました。さらに、来年３月に３週間ぐらい、両方の両親が日本へ来て、世話をしてくれます。けれども、ルカ福音書によると、ヨセフとマリアにはそういったことは全然ありませんでした。この普通の夫婦はいとも簡単に信仰によって主なる神さまの天使の御言葉に従って、世界の救い主であるイエスさまを迎えました。だからこそ、普通の人々として私たちは皆、あの夫婦のような深い信仰を志して生きたいと思います。 ローラ： マリアとヨセフにしてみれば、普通の生活をしていたさなかに、神さまから信じられないほどのニュースをもらったわけです。その二人は普通の人でしたけれども、いや、正に普通の人だったからこそ、珍しい機会を与えられたのです。それは神の子を生んで、敬虔に育てるということでした。チャレンジにあっても、疑問を持っても、信仰によって神さまの導きに従いました。だからこそ世界に、あるいは、そのような平凡な人生の中にイエス・キリストがいらっしゃったのです。 前に読んだことがあるクリスマス物語は、マリアとヨセフだけではなく、他の人々の平凡な生活に、パーフェクトではない状況の中に、イエスさまが来たということを、読者に向かって何回も繰り返して語りかけています。 御子キリストは、占領されているイスラエルに来てくださいました。 御子キリストは、苦しい出産においてマリアのもとに来てくださいました。 御子キリストは、税金を払うための旅をしているヨセフのもとに来てくださいました。 御子キリストは、気さくな宿主の馬小屋に生まれて来てくださいました。 御子キリストは、天使の声を通して、徹夜する貧乏な羊飼いのもとに来てくださいました。 御子キリストは、珍しい星によって、東の方から来た外国人の学者のもとに来てくださいました。 確かに、イエスは世界に、へりくだって、来てくださいました。 当時キリストが世界に来るのを待っていた人々は違う期待を持っていました。本当のパワーを持っている王さまのようにキリストは来ると思っていましたが、現実には、馬小屋で生まれた赤ちゃんとして来てくださいました。普通の生活をしている人に初めて来てくださったのです。 現在でも同じなのではないでしょうか。毎年、クリスマスの時、私たちはイエスさまの誕生日を祝うだけではなく、「イエスさまが世界に来た」ことをも祝っています。「イエスさまが世界に来た」という過去の出来事は、「イエスさまが一人一人の人生に来る」という現在の出来事でもあります。クリスマスを祝いながら、イエスはどうやって自分の人生に来るかと考えるべきなのではないでしょうか。 マリアとヨセフと同じように、皆さんは普通の人間です。イエスさまはこの私のもとに再び来てくださるでしょう。もちろん、マリアとヨセフの経験ほどではないでしょうけれども、私たちは平凡な生活の中にイエスさまを見る機会、自分の心にイエスさまを迎える機会があります。難しい点は、私たちが平凡な生活の中で「どのようにしてイエスを見つけることができるのか」ということにあります。 カーソン： 飼い葉桶に生まれたイエスさまの物語の２０００年後の現在に、キリストは普通の生活を送っている人のもとに来てくださいます。 電車で職場に通っている男女のサラリーマンのもとにイエスさまが来てくださいます。 仕事と家族の世話をバランス取りながら行っているお父さん・お母さんのもとに、イエスさまが来てくださいます。 退職した後の人生の目的を探している高齢者のもとにイエスさまが来てくださいます。 親の希望に到達しようとして頑張っている子供のもとにイエスさまが来てくださいます。 学校での子供同士のいじめを止めさせようと苦闘している先生たちのもとにイエスさまが来てくださいます。 予算を満たすのに苦労している教会の執事会のもとにイエスさまが来てくださいます。 卒業の後の将来に向かっている大学生のもとにイエスさまが来てくださいます。 私たちの人生の旅の山と谷とを問わず、イエスさまが来てくださいます。 今年、キリストに従っている普通の人々として、一人一人はそれぞれ異なる生活を送っています。そのような私たち皆が、このクリスマスにイエスさまの希望、平和、喜び、愛が私たちの生活を満たしていることを見出しました。飼い葉桶の隣に近づいて、もう一回イエスさまの顔を目にするために、一人一人は自分の心を準備しています。皆様、周りを見てください。クリスマスを祝う一週間が始まりますが、今も私たちのもとにイエスさまはいらっしゃいます。時々、つまらない役割を演じていると感じても、神さまが昔から、普通の人々を使われて、想像できないことを行われたことを覚えましょう。兄弟姉妹、このクリスマスに、恵みを受けたことに感謝して、イエスの現在の素晴らしい働きを見て、福音（ゴスペル）を交わし合いましょう。 皆様、メリークリスマス。
