2024/01/03今週の一言

 今回はアンドレ、シモン・ペトロの弟です。

 アンデレとペトロはガリラヤ地方のベトサイダという町出身で(ヨハネ1:44)、いつの頃からかカファルナウムに移住しています。そしてアンデレは兄夫婦と、兄の義母と同居していたようです(マルコ1:21-34)。兄弟の職業は漁師でした(同1:16-20)。兄弟の名前がどちらもギリシア語名なので親の代からギリシア文化・言語に親しんでいたと推測できます。

 ヨハネ福音書によるとアンデレはイエスを兄に紹介した人物、つまり一番弟子です(ヨハネ1:35-42)。マルコ福音書ではペトロ・アンデレ兄弟、ヤコブ・ヨハネ兄弟はほぼ同時に弟子とされています。またイエスはアンデレ以外の三人を重用します(マルコ5:37・9:2・14:33)。

 使徒言行録においてもアンデレが登場しないことは、彼が初代エルサレム教会における序列に興味がなかったことを暗示しています。出世欲が強いのは、兄ペトロやヤコブ・ヨハネ兄弟、そしてイエスの弟ヤコブです。このような後の時代の事情が、マルコをはじめとする共観福音書の記述に反映しているのでしょう。アンデレを知るにはヨハネ福音書を読むことです。

 たとえば、成人男性だけで5000人以上いた群衆を満腹させる奇跡物語において、アンデレは五つのパンと二匹の魚を持っている少年をイエスに紹介しています(ヨハネ6:8-9)。また、アンデレはギリシア語が第一言語の人をイエスに紹介もしています(同12:20-26)。アンデレのギリシア語技能が生かされたという逸話です。これらの場面で彼が紹介者という脇役に徹していることが重要です。

言い伝えによればアンデレはインドまで宣教の旅をし、そこで殉教したそうです。パウロが華々しくヨーロッパへ向かう一方でひっそりと中央アジア/南アジアへ。これもまたアンデレらしいのかもしれません。JK