2023/12/13今週の一言

今回はアンナ、新約聖書の預言者です。ルカ福音書2章36-38節に登場します。ヘブライ語で言えばハンナです。

 アンナはアシェル部族出身者です。しかし奇妙です。紀元前721年に北イスラエル王国が滅亡した時に、「北の十部族」のうちの一つであるアシェル部族も消滅しているはずだからです。ということは、イエス誕生のころ、人々は比較的自由に「自分は何部族出身」と名乗って良かったのでしょう。

 アンナの父親ファヌエルは、アシェル部族出身と自称し、娘に「北の十部族」の中心エフライム部族の英雄の名前を付けます。それが預言者サムエルを生み、有名な歌を遺したハンナ≒アンナです。

 アンナは若い時に結婚をし(15歳ぐらいでしょうか)、7年間の結婚生活の後夫と死別しています。やもめとなった後に預言者として召されたのだと思います。新約聖書の中で預言者と明記されている女性はアンナとフィリポの四人の娘たちだけです(使徒21章9節)。

 84歳となった今もアンナはエルサレム神殿から始終離れません。断食や祈りといった宗教行為をずっと続けています。当時の神殿には女性が入ることができない場所がありました。それでもかまわず、その限られた区画で宗教行為をしていたのでしょう。人々は60年以上も貧しいアンナの生活を支えていました。アンナは豊かな預言や祈りで人々を支えていました。

ある日、赤ん坊のイエスを連れたマリアとヨセフがアンナの近くを通りかかります。ゼブルン部族・ナフタリ部族の地ガリラヤの訛り、「北の十部族」の言葉です。アンナは三人の家族に近づいて神を賛美します。そして、この赤ん坊が救い主であると預言をするのです。ナザレのイエスは「北の十部族」にとっても悲願の救い主なのでした。JK