2024/02/07今週の一言

 今回はデボラです。エフライム部族出身の預言者であり士師です。彼女の夫はラピドトと言いますが、それ以上の情報はありません。

 デボラは士師記4-5章に登場します。王制が導入される前、イスラエルが十二部族連合体だったころの政治指導者を士師と呼びます。裁判を司る人という意味の役職です。裁判によって統治することがイスラエル各部族の伝統です。

 紀元前12世紀ごろでしょうか、デボラは「デボラのなつめやしの木」という場所に座って、課題を抱えてくる人々を迎え、必要な裁判を毎日執り行っていました。その木は「町の門」の傍らにあったのかもしれません(ルツ4章)。デボラは同部族預言者・士師サムエルの大先輩です。

 その頃イスラエルはカナン人による北方からの軍事占領に苦しんでいました。十二部族の北に位置するナフタリ部族・ゼブルン部族に、デボラは檄を飛ばします。「不法な軍事占領に抵抗せよ」というのです。この呼びかけにナフタリ部族の士師バラクが応えます。二部族有志の農民兵は奇跡的勝利を収めます。カナン人自慢の鉄製戦車900両が、時ならぬ豪雨による泥濘で身動きがとれなくなったからであろうと推測されています。葦の海の奇跡に似ています(出14章)。

 預言者ミリアムの後輩にあたるデボラは、ミリアムと同じく奇跡的救いの直後に神を賛美する歌を残しています。「イスラエルにおける農民は絶えた。彼らは絶えた。私デボラが立つまで。イスラエルにおける母わたしが立つ(まで)」(士5章7節、私訳)。ここには彼女の自負と、農民との連帯感が示されています。彼女が立つ限り、農民は起こされ蘇らされるのです。 JK