3/23今週の一言

最近、「公正・平等な選挙改革にとりくむプロジェクト(略称とりプロ)」という活動に携わっています。「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し・・・」(憲法前文冒頭)とあります。さまざまな汚職やスキャンダルを目にする度に、「正当に選挙された代表者」なのかどうかを疑いたくなります。法律作りの素人であるタレントがなぜ立候補しやすいのでしょうか。参議院選挙が全国一区の比例代表・非拘束名簿式(候補者名=政党名)を採用していることに主原因があります。選挙制度と議員の質(裏返せば有権者の質)は関係します。

キリスト教神学の課題として、「公職の選挙」が論考されることは今までほとんどなかったと思います。十字架の出来事を切り口に、「選挙を神学する」ことを試みてみましょう。

イエスを処刑することはユダヤ植民地政府が決めました。最高法院(サンヘドリン)という最高裁と内閣と国会を合わせたような機関です。議員定数は70名。割り当てが決まっており、祭司(サドカイ派)24名・長老(サドカイ派)24名・学者(ファリサイ派)22名で、祭司の中の大祭司が議長でした(マルコ14章43節も参照)。もちろん普通選挙ではありませんから、その他の党派は最初から締め出されています。たとえば、ヘロデ党/派、ゼロタイ派(熱心党)、エッセネ派(バプテスマのヨハネの宗団も)などの宗教的政治的立場がありましたが、最高法院に議員を送り込むことは制度的に不可能でした。さらに議会内部にあっても、3分の2がサドカイ派で占められるように制度設計されています。このような代表機関が民意を反映することは困難です(ヨハネ19章38節)。

新進気鋭の宗教家イエスを支持していた人々は、イエス自身の創始した「神の国運動」の担い手・「ナザレ派」です。福音書の証言によれば、ナザレ派はファリサイ派・ヘロデ派・ゼロタイ派・エッセネ派と親和性があります。ファリサイ派の最高法院議員ニコデモはイエスの弟子でした(ヨハネ3章1節。ルカ7章36節以下も)。イエスはヘロデ派の幹部にも人脈がありました(ヨハネ4章46節以下。ルカ8章3節、同23章6節以下)。イエスの側近にはゼロタイ派のシモンもいました(マルコ3章18節)。イエス自身がヨハネからバプテスマを受けるほどに、一部側近も含めナザレ派とエッセネ派は近い存在でした(マルコ1章9節。ヨハネ1章35節以下)。

サドカイ派以外からの、イエスに対する広い支持に民意がありました。サドカイ派に権力を集中させた、民意を反映しない制度が、議員の質を劣化させ・最高法院の熟議をさまたげ、扇動されやすい群衆がそれを支えています。JK