8/10今週の一言

8月8日天皇の心情が録画放送として公表されました。要約すれば「加齢のために『国の象徴』という仕事を続けるのが辛い」という考えですが、後述の制約のために回りくどい言い回しに終始しました。憲法2条に、「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」とあるので、生前退位と皇位継承については憲法改正を必要としません(皇室典範改正で十分)。

ただし、もっと根本的な意味で、象徴天皇制について議論を深めていくことが必要だと思います。わたしは立憲君主制であったとしても全ての王政に批判的です(サム上8章)。君主の持つ「ありがたみ」という権威を、自他共に政治的に利用することがあるので、民主政・バプテスト主義と相性が悪いのです。「貴族あれば賤族あり」もけだし名言。全ての人は平等に神の子・人の子です。

天皇は憲法尊重擁護義務を負う公務員です(99条)。その憲法では天皇に国政に関する権能を与えず、ただ国事行為のみを行なうことが義務付けられています(4条1項)。国事行為には十種類あり(7条1-10号)、儀礼的職務が主です(6条も参照)。ところが、現在の天皇も「慰問の旅」などの仕事を公務として増やしています。「公的行為」という新しい概念を作って、国事行為以外の仕事をしていることは、憲法上いかがなものでしょうか。そこに「ありがたみ」の利用を見ます。

ついでに言えば、内閣総理大臣が7条柱書と同3号を悪用して任意に衆議院を解散する行為を濫用していることも、天皇を利用することの一種でしょう。

天皇の地位は、「主権の存する日本国民の総意に基づく」(1条)とあります。どのようにして「総意」が確認されるのでしょうか。何割以上の賛成が「世襲」(2条)を是とする基準でしょうか。逆に何割以上の反対で罷免できるのでしょうか(15条)。

天皇は国民の一人であるのにもかかわらず(10条)、基本的人権(11・13・97条)が著しく制限され、事実上人権獲得の努力もできません(12・16条)。法の下の平等にも反しています(14条)。貴族の一種であるという意味でも不平等ですが(14条2項)、天皇とその家族が奴隷的拘束を受けていること(18条)、政教一致した国家の庇護のもと信教の自由がないこと(20・89条)、言論・政治的表現の自由がないこと(21条)、居住・移転・職業選択・外国移住・国籍離脱の自由がないこと(22条)、労働三権もないこと(27-28条)等、憲法内部で矛盾をきたしています。

もし公務員の一種として「国民統合の象徴」(1条)という職業が必要であると主権者の「総意」で判断した場合、職務内容や任期を主権者が定め、その職業を一つの家系に絞るのではなく、すべての主権者が選んだり捨てたりすることができるようにしなくてはいけないでしょう。結局のところ「世襲」(2条)が、主権在民原則および基本的人権尊重原則と矛盾を起こさせる主要因なのです。 JK